「まつり」からはじまる「まちづくり」

―参加者の言葉で振り返るアーカイブ―

はじめに

ぬかどこトーク、これまでは毎回、私自身が振り返りの記事を書いてきました。

でも今回は、それ以上に、この場に参加したお二人が、当日の雰囲気や学びを何よりも豊かに表現してくださいました。

私が要約するよりも、そのまま読んでいただきたい。
そんな思いから、今回はお二人の投稿を、そのままアーカイブとして掲載させていただきます。

それぞれの視点から見えた「ぬかどこトーク」を、ぜひお楽しみください。


参加者の声①

浅香保ルイス龍太さんより
※ご本人のご了承をいただき、Facebookへの投稿を掲載しています。

昨夜は、「ぬかどこトーク」の夜。

立場や肩書きを脱ぎ捨てて語り合う「フォースプレイス(第4の場)」なのだ。

まりこさん&kaoriさんの美味しい料理とお酒(もとい、ワシはお茶)を囲みながら、ゆるやかな対話を通して、それぞれの、自身の考えをじっくり発酵させていくオープンな場。

今回のゲストスピーカーは、野村仁志さん。

大手百貨店に勤務する一方で、2022年、千里ニュータウン60周年を機に、産学民が連携する共創プラットフォーム「せんりプラットフォーム」を設立し、代表に就任。1ヶ月にわたり地域全体で展開する「千里祭り」など、なんかすごい祭り?イベント?を、されている。しかも、千里祭りをきっかけに人や企業がつながり、自発的な活動が次々と生まれてきたのだとか。それだけでもすごいが、野村さんがすごいのは、その仕組みを明らかにしたいと、2024年に50歳で大阪公立大学大学院へ進学し、2026年に修士号を取得。後半は、大学で研究した成果を惜しげもなく開陳。今後論文になる予定の現在は未発表(!)のものも披露してくれるという太っ腹。もちろんここでは書けない。

以下、お話のほんの一端。

千里ニュータウンは吹田市と豊中市にまたがり、さらに隣は箕面、茨木と複数の行政区域が接する地帯だ。今年で60年を迎えた。オールドタウンのイメージが強いが、この10年ほどでマンション建て替えが相次ぎ、子育て世代が急増している。転勤族が多く、「標準語が通じるまち」として関西圏外からの転入者に選ばれており、1クラスで毎年1割が入れ替わるほど新陳代謝が激しい。

ちなみにワシは、4歳から18歳までをこのまちで暮らしているが、40年前のこと。もうだいぶ変わっただろうな。そうか今は標準語が幅を利かせているのか。。

転勤族が多いぶん「知らない人ばかり」で、しかも行政区域がまたがっているから地域の情報も取りにくい。「地域の情報を知りたい住民」と「地域に活動を伝えたい事業者・団体」が接点を持つことが大切やなと考え、せんりプラットフォームを立ち上げられた。

たとえば茨木市長は、「もう全然おカネがないんですわ。これからのまちづくりは自助努力でお願いしたい」と、行政が主導できない時代に入った。ならば自分たちで、しかも住民・事業者・大学・行政が「フラット」に関わる仕組みをつくるしかない。そう思って動きはじめた野村さんだった。

そこで、せんりプラットフォームが毎年開催している「千里祭り」が構想される。「祭り」やったらみんなが寄ってくるのではないかという軽いノリから、ちょっとやってみてまずはつなげてみよう、と。実態はイベントだとしても、「祭り」というパワーのある言葉を使うことも大切だと、この言葉が使われ、現在の巨大コンテンツにつながっていく。

千里祭りは、分散開催・1ヶ月間という変わったかたちのお祭りだ。1か所に集まるのではなく、エリア各地の21会場(昨年実績)でそれぞれのコンテンツが展開される。参加・協力団体は100〜120、ワークショップ等の実施コンテンツは49本、参加人数は延べ約3000人。とんでもない!

そのユニークな形態もさることながら、コンテンツの中身がおもしろい。

ガンバ大阪のスタジアムに行って「お仕事」を体験するプログラムでは、ガンバの担当者が真っ先に語り出したのがサッカーではなく「地域貢献の話」だったという。じつはガンバ大阪の社員の仕事時間の7割は地域活動なのだと言われて、野村さんはそこに気づいた。それを知ってほしいのではなかろうか!大阪大学附属病院の臨床工学技士のお仕事体験で鶏肉にメスを入れた高校生は「臨床工学技士になりたい」と言い出した。地元のFMラジオ局のDJ体験、高校生マジシャンのワークショップ……。なにか、はじめの一歩がここにはある。そんなワクワク感をうまく演出し、うまく伝えているのだろう。

このへんの話は具体例を交えながら、やたらとおもしろい。

そして、野村さんの高い言語化能力のおかげで、そこを貫く法則のようなものが、次々と提示されていく。

このへんの話は、のちの大阪公立大学での研究により、言語化されていく。

研究対象としたのは千里祭りと、もうひとつ2012年にニュータウン50周年記念として行政主導で始まり、翌年から住民が自主運営で続けている「千里キャンドルロード」の2事例。祭りに関わった人16名にインタビューし、逐語録をキーワード化して、活動が生まれるプロセスを概念モデルとして描き出した。

野村さんが使った言葉が「祭縁(まつりえん)」だ。祭りをきっかけに生まれる縁・コミュニティのことで、先行研究でも祭りが多様な人々のゆるやかなつながり(ソーシャルキャピタル)を生む場として注目されてきた。野村さんの研究はさらに踏み込んで、その「縁」の中で何が起きているかを解きほぐそうとした。

インタビューから見えてきたプロセスはこうだ。

まず祭りに関与することで、コンセプトや目的への共感が生まれる。体験を通じて人々の動きを見て感化される。そこからコミュニティへ入っていくときには、「黄色のTシャツがかっこいい」とか「この人たちええ人やな」というとても素朴な動機があって、そこから信頼関係が育まれる。そうなると、コミュニティの中だけで閉じず、人々は個別で会いはじめる。関係が深まる。そして「私ってこんなことできるんちゃうか」という自分の役割の自覚が生まれ、自発的に何かをやりはじめる。それを周りに認められることで、さらに自律的な活動へ向かう。企業や大学からも「一緒にやりませんか」と声がかかるようになる。すごい循環だ。

「結束しながらもオープン」というバランスを保ち続けることが重要なのだと。そしてそのバランスは自然には保てない。「楽しさ」が新しい人を呼んでいるから、義務感・組織論に傾きすぎると崩れる、という話も正直だった。

実際、地域団体も、気を緩めればすぐに閉じたものになってしまうからな。

最後、鹿児島出身で千里に身寄りなく移住した40代女性の話が印象深かった。数年前の台風で、まちのユーカリが倒れた。千里キャンドルロードで知り合った人から、「このユーカリの木は住民が植えたんや」という話を聞き、40代女性は「なぜか私がなんとかせなあかんと思った」という。そこから行政と連携してユーカリの植え直し、今も続けている。

「祭りに関わったことがきっかけで定住した」という方が16名中4名いたというのも、驚きの数字。こうした、自分ごととする人が生まれるのが、祭りの中にはあるというエピソードは、とても印象的だった。

今日集まったのは、まちづくりに関わっている人たちばかり。そんな話を中心に、夜11時近くまでは話が尽きなかったのではなかろうか。

なんか、いろんなものが発酵した、ぬかどこな夜だったぞ。河上さんは、相変わらずのさすがのファシリ。次々と即興で言語化していく。そしてトミーとばったりは、びっくりの夜。外は雨。


参加者の声②

河上崇陽さんより
※ご本人のご了承をいただき、Facebookへの投稿を掲載しています。

6月のぬかどこトークは、千里中央を舞台にした「千里祭り」の仕掛人・野村仁志さんが話題提供。

お祭りの縁が人々をつなぎ、そこにイノベーションが生まれる仕掛けがある——という分析がとても面白かったです。(詳しい内容は、いつも場の空気を絶妙に文章へ落とし込んでくれるルイスさんの投稿をご参照ください)

お招きした方々の中には、京橋でまちづくりに関わっている人たちも何人もいて、実に盛り上がる回に。さらに池田万博の仕掛け人も参加していて、いろいろな視点から提供された話題がさらに深掘りされたり、他の事例も伺えたりと、話が幾重にも広がっていきました。

個人的には、隣に座っていたシェアハウス運営の方のお悩みがとても興味深くて。私自身が東京・日暮里で経験した1年間のシェアハウス暮らしのことをちょっと披露して、何か参考になればとお話ししてみました。

次回のぬかどこトークは8月を予定しています。


おわりに

お二人とも、素敵な振り返りの言葉を発信していただき、ありがとうございました。
ルイスさんの記事は「何が語られたか」を記録されていて、河上さんの記事は「その場で何が起きていたか」を記録されています。同じ時間を共有していても、心に残るものは人それぞれ。その違いもまた、この場の豊かさであり、これからも、一人ひとりの視点が重なり、新しい対話やつながりが生まれる場を育んでいけたらと思います。

ご参加くださった皆さま、本当にありがとうございました。


今回のぬかどこトークについて

(当日のご案内)

📣 ぬかどこトーク vol.12

【「まつり」からはじまる「まちづくり」】
― 地域イベントが「つなぎ、育む」新しいコミュニティとプラットフォームの実践と研究 ―

🗓 日時
6月25日(木) 19:00〜21:00
ゲストスピーカー 野村 仁志さん

<プロフィール>
1998年、某百貨店に入社。

長年、バイヤーやマーチャンダイザーとして、プライベートブランドの開発や社内外の商品開発・コンテンツ開発プロジェクトに携わる。現在は百貨店で業務を担う傍ら、自らもブランディングオフィス「BRANDoSEE」を立ち上げ、企業や地域のブランディングを支援している。

2022年、千里ニュータウン60周年を機に、産学民が連携する共創プラットフォーム「せんりプラットフォーム」を設立し、代表に就任。1ヶ月にわたり地域全体で展開する「千里祭り」などの実践を通じて、イベントをきっかけに人や企業がつながり、自発的な活動が次々と生まれる様子を目の当たりにする。

その仕組みを明らかにしたいとの思いから、2024年に50歳で大阪公立大学大学院へ進学し、2026年に修士号を取得。

研究では、祇園祭などの都市祭礼にみられる社会関係資本「祭縁(まつりえん)」に着目。伝統的な祭りだけでなく、地域イベントにおいても「祭縁」が形成され、そこから様々な活動が生まれるプロセスについて実践事例をつうじて理論的に考察した。

✨ 今回の問い

野村さんが実践と研究を通して注目しているのは、

イベントや祭りをきっかけに人がつながり、新たなコミュニティや活動が生まれ、信頼に基づく関係性が育まれていく社会関係資本「祭縁(まつりえん)」です。

コミュニティづくりやまちづくりというと、多くの場合、「まず場をつくる」ことを考えます。

しかし野村さんの研究は、「まつり」や「イベント」が、人と人との新しい関係を生み出す装置として機能している可能性を示しています。

  • なぜ、たった1日のイベントが、その後も続く人間関係を生み出すのか。
  • なぜ、一時的なプロジェクトが、新しい地域活動や事業の種になっていくのか。

地域の未来や、これからのコミュニティのあり方について、一緒に考えてみませんか。

防災、関係人口づくり、ウェルビーイング、地域活動など、私たちが日頃取り組んでいる実践にも通じるヒントが、そこにはあるかもしれません。

今回のぬかどこトークでは、

💡 人と人をつなぐ「祭縁」とは何か?
💡 コミュニティはどのように生まれるのか?
💡 これからのまちづくりに必要なプラットフォームとは?

という問いを、実践者であり研究者でもある野村さんとともに深めていきます。


ぬかどこトークは、その場で生まれた問いや出会いが、それぞれの日常の中でゆっくりと発酵していくことを願いながら続けています。

次回は、これまでのあらゆる分野の人の対話の中で何度も語られてきた「防災」をテーマに開催予定です。

「ケア」「福祉防災」「災害福祉」――。

これまで別々に語られてきたキーワードをつなぎ合わせながら、これからの地域やコミュニティのあり方について、参加者の皆さんとともに考える時間にしたいと思っています。

ぬかどこトークは招待制のため、一般募集は行っていませんが、今回と同様にアーカイブ記事を通して、そこで生まれた問いや学びを皆さまと共有していければと思います。

文:山田摩利子