
今年度の大阪市立総合生涯学習センター「まちづくり市民大学(いちょうカレッジ)」のトップバッターとなる講座【フィールドワークで探る!まちのコミュニティコース】を担当させていただきました。
まち歩きの講師には、大阪市北区のフリーペーパー「つひまぶ」編集長の浅香保ルイス龍太さんを講師にお迎えし、北区天満のまち歩きを実施しました。
梅雨の時期ということもあり、お天気が一番心配でしたが、なんと両日とも晴れ☀️
絶好のまち歩き日和となりました。
さて、この講座。実は今年初めての新企画‼️
世の中には、すでにたくさんのまち歩き講座やイベントがありますが、今回は、私の専門性を活かした視点で、大阪市立総合生涯学習センターの皆さんに企画していただきました。
ちなみに、私が専門としているのは、都市開発やハード整備としての「まちづくり」ではなく、人と人との関係性やコミュニティに着目する「都市社会学」の分野です。そこから、人や地域のしなやかな回復力(レジリエンス)へと関心が広がり、現在は、防災を入り口にウェルビーイングへとつなげるコミュニティデザインを生業としています。
そんな背景もあり、今回の講座では、歴史や名所を巡る一般的なまち歩きではなく、「まちのコミュニティを知ること」をテーマにしました。まちを知ることは、建物や歴史からだけではわかりません。そこに暮らす人の暮らしや、人と人とのつながりに触れることでもあります。
それに、同じ道を歩いていても、誰と歩くか、どんな視点を持つかによって、見える景色はまったく変わります。参加者の皆さんが、それぞれのまちを見る新しい視点を持ち帰ってくださっていたら嬉しい。そんな想いで、ルイスさんと一緒に学習プログラムの企画を考え、まち歩きのポイントや、その後のワークショップを構成しました。
開催前からこの想いが皆さんに伝わっていたのか、たまたまなのか…理由は分かりませんが、30名の定員に対して倍以上の応募があるという、なんとも嬉しいスタートにもなりました。

さて、今回のまち歩きの中で、ルイスさんもこんなお話をされていました。
手元には資料があり、基本となるルートや伝えたいキーワードはある。でも、参加者の表情や反応、その場の空気を見ながら、話す内容や深さを少しずつ変えている。同じルートを歩いても、同じ話を聞いても、その日集まった人によって、生まれる対話も気づきも違う。
まち歩きの振り返りでお話しされた、ルイスさんの言葉
だから毎回、同じにはならない。
まさに、唯一無二のまち歩き案内人だなと感じました。
その時にルイスさんから出てきた「チューニング」や「ライブ感」という言葉も、とても印象的でした。私は、この感覚こそが、都市社会学やコミュニティづくりに必要な感覚なのだと思っています。そして、この感覚は、私が学生時代からずっと続けてきた「音楽」とも、とてもよく似ています。
良い音楽は、単に正しい音を並べることではありません。
大学受験では、同じ曲を同じように演奏する受験生がたくさんいて、みんな上手で、間違えないことが当たり前の世界でした。その中で、良い演奏かどうかを分けるのは、「間(あわい)」の取り方でした。
音と音の間。
鍵盤と鍵盤の間。
空気と楽器の間。
そして、演奏が始まる前や、終わった後の間。
目には見えないけれど、そのすべてが曲に影響を与え、唯一無二の音楽を奏でています。

まちづくりやコミュニティづくりも同じなのかもしれません。
人と人との間。
場と人との間。
言葉と言葉の間。
その場の空気や、そこに集まる人たちとの関係性によって、その瞬間にしか生まれないものがある。
だからこそ、毎回同じにはならない。
まち歩き後のワークショップでも、こちらが用意した問いは同じでも、参加者が違えば出てくる言葉も違いました。

【まちを歩くことは、暮らしと自分を知る第1歩】
今回のまち歩きを通して改めて感じたのは、「人と人が出会い、その場でしか生まれない化学反応」こそが、私がまちづくりに魅了され続けている理由なのだということです。
同じ場所を歩き、同じ景色を見ていても、参加者それぞれが異なる視点や気づきを持ち寄り、その場ならではの対話が生まれていました。私は、このライブ感や即興性こそが、AIにも簡単には真似できない、人と人が関わる価値なのだと思っています。
ワークショップの最後には、まちづくりの入り口は、必ずしも地縁組織や従来の地域活動だけではない、ということもお伝えしました。
もちろん、町会活動や地域清掃、防犯・防災など、これまで地域を支えてきた活動はとても大切です。しかし、これからの時代は、それ以外にも、もっと多様なまちとの関わり方があっていいのではないかと思っています。
そして、その入り口を選ぶ自由と権利は、そこに住む人だけでなく、訪れる人も含め、誰もが持っているものです。
また、都市社会学とまちづくりをつなぐ手法として、こうしたフィールドワークは、これからさらに活用されていくとよいと感じています。そして、その学びを地域へとつないでいくことも、社会教育士の大切な役割の一つではないかと思っています。
知識や知見を得ることは、物事を整理し、理解し、構造的に捉える力につながります。(左脳的な視点)
一方で、感じることは、自分の中に問いを生み、自分なりの答えを見つけていく探究する力につながります。(右脳的な視点)
その両方の視点をバランスよく持ちながら、俯瞰してまちや物事を見る力を育み、まちで暮らしながら学び続けること。それが、私が大切にしているまちづくりの視点であり、「実感から問いを深める」都市社会学の学びをより一層深めたいと思う好奇心にも繋がっています。
まちづくりは、一部の人だけが担う特別な活動ではなく、誰もが自分なりの入り口から関われるものです。
そして、まちに関わることで、新しい出会いや学びが生まれ、人生そのものが豊かになっていく。
実際に、地域と関わる人は、生き生きとしていて、幸せそうな方が多いと感じています。
もちろん、地域や人との関わりの中で、しんどさや面倒を感じることもあります。でも、それもまた、自分の価値観や課題に気づき、足らずを受け入れるリスクマネジメント力を養う機会なのかもしれません。
まちに関わることは、誰かのためだけではなく、自分自身の人生を豊かにすることでもある。
そんなことを、今回のまち歩きを通して改めて実感しました。

「地域に関わる人は幸せになる」は、この本の冒頭で紹介されています。
最後になりましたが、ルイスさんと私のまち歩き企画は、もう一つ今年予定しています。
次回は、「社会との接点で広がるウェルビーイング入門と実践」の学習プログラムの一環で、
11月にまち歩きをで行います。どの回も、単発参加もOKです。
ぜひご参加ください。1回目は、オンラインのみの講座もあります。
お申し込み先は、うめらくホームページのお問い合わせまたは、下記のPeatixページからどうぞ
https://umerakuwell-being.peatix.com/view

文:山田摩利子